BIR: 羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季/ James Rebanks
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羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季/James Rebanks, (翻訳:濱野 大道)
- amazon: 羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季
あらすじ
※ Amazonより抜粋
太陽がさんさんと輝き、羊たちが山で気ままに草を食む夏。 羊飼いたちのプライドをかけた競売市が開かれ、一年で一番の稼ぎ時となる秋。 過酷な雪や寒さのなか、羊を死なせないように駆け回る冬。 何百匹もの子羊が生まれる春。
羊飼いとして生きる喜びを、湖水地方で六百年以上つづく羊飼いの家系に生まれた著者が語りつくす。ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー。
感想
ある地域にいるある男の人生について。 そういう括りとしては、「ヒルベリーエレジー」とかにも近いと思う。伝えたいこと、その人生はまるで違うけれど。
- 著者(主人公と仮定する)の人格が素晴らしいこと(そしてそうなった人生とはどんなものか)
- 学ぶ・教育という行為の大切さ
- 本を読むことの楽しさ
- 周囲にいる人物に与えられる+の影響力
- 現代の資本主義的、自由主義的社会への考えや姿勢
- 環境が与える力
というような共通したテーマがそこには存在すると思う。
書き方がすごく上手くて、ひつじたちとの日常・労働、四季を通して移り変わるやること、そして彼自身の人生。歴史、湖畔地方の立場。その重なりがテンポよく、且つ丁寧に、一切他人事化されてない作者(主人公)目線で語られている。
ミクロな視点として、日々のやること、積み重なる人生、四季ごとに行う労働、彼自身の人生 マクロな視点として、ミクロな積み重ねとしての歴史、彼自身の人生に対するその周囲・特に父祖父の人生。
個人的にとても考えさせられたのが、
- 故郷を持っている人への羨ましさを刺激させる内容
- 80後半,90年、ミレニアル世代。自由主義の子世代。ベッドタウンに住居があったり、「故郷」をもっていない層の、この帰属意識・所属意識的な「わからなさ」
- 誇るべき故郷とその文化(「ヒルベリーエレジー」の場合は、誇るべきであるが破綻した状態でもある。もっと長い歴史がありそれがメインのテーマともなっていると思う)
- それを守りたい気持ち、そしてそれを守るためにはどうすればいいのか。
- 広がってしまった世界との関わり(観光地化など)
- 誇るべき故郷とその文化(「ヒルベリーエレジー」の場合は、誇るべきであるが破綻した状態でもある。もっと長い歴史がありそれがメインのテーマともなっていると思う)
- こういう土地・故郷での女の立場
- 女性の羊飼いもいるけど、印象として支える立場的な描かれ方しかしてないなとか。(祖母、母、妹、妻など近しい人全員)これは批判的な意味ではなく、主人公が彼自身なのでそこは視点(コンセプト的に仕方ない)の問題とおもう。勿論尊敬の念は感じるが周囲の女性陣と、父・祖父はまた別の感情があるのが見えてそこが面白いなとおもった。
- 彼の妹の立場のような人の物語にも興味があるな。女の人生の話(小説であれなんであれ)は少ないな(私が知らないものも勿論たくさんあるが)という気持ち。
- ベアトリクス・ポターレベルで立派な人、すごい。また本を読もう。
- 女性の羊飼いもいるけど、印象として支える立場的な描かれ方しかしてないなとか。(祖母、母、妹、妻など近しい人全員)これは批判的な意味ではなく、主人公が彼自身なのでそこは視点(コンセプト的に仕方ない)の問題とおもう。勿論尊敬の念は感じるが周囲の女性陣と、父・祖父はまた別の感情があるのが見えてそこが面白いなとおもった。
- 人間はもっともっととなんでも拡張しすぎでは
- 今の資本主義的なやり方の限界について
- 何かをつかって楽になること、たくさんつくること、歴史的なやり方で得られる利益、バランスについて
- 毛糸安すぎやろ・・・・・・・・・・・・・。(ファストファッションブランド問題)
今かんがえさせられること、考えなければならないこと、憧れ、自分はそれに対してどうなのかとか、Covidを経た今の我々が目を向けなければならない問題や視点がてんこもりなので、世界中で読まれたんだとおもう。 タイミングとか内容とか今にばっちりあてはまってる本なのだろうなあと感じた。
訳者あとがきハイライト(なんかハイライトもっとしてたのに消えてたな……)
- 本書は、彼の家族が営むイングランドの小さな羊農場の物語でありながら、移動性(モビリティ)と個人主義が当たり前となった現代において、継続性、ルーツ、所属意識の大切さを訴える本でもある。